アメリカ紀行2014年8月(3)
8月9日(土)アナコスティア・コミュニティー・ミュージアムと館主催のギャラリートーク&ツアー参加、ホワイトハウス前、エリプス広場。
アナコスティア・コミュニティー・ミュージアムは行ってみたい場所の筆頭格だった。というのは、随分以前のことになるが、山本珠美さんの名論文を読んで大変興味を持ったからだ。CiNii 論文 - コミュニティ・ミュ-ジアム
ここへ行ってみたいという話を誰かにしたところ、「かなり危険な地域にあるらしいですよ」と言われた記憶がある。地球の歩き方にも一応載っているが、行き方はあいまいだ。ワシントンD.C.に着いてから館のHPを見ると、イベント情報が色々載っている。
Events | Anacostia Community Museum
WS形式のものも参加してみたかったが、日数の制約でツアーの方に行こうと決めた。最初は、電話予約なのかとビビったが、ネット上で簡単に予約できることが分かった(上のリンクをご覧ください)。このスミソニアンのシステムはよく出来ていて、リマインダー機能もある。もっとも館の方が、この予約を見ていたかは、不明だが。
行き方は、スミソニアンのバスが航空宇宙博物館前等から出ていることが分かったのだが、グループのみ利用可なのかと読み間違えて、地下鉄とバスを利用して自力で行くことにした。
http://anacostia.si.edu/resources/Shuttle_Anacostia_Weekend_Summer_2014.pdf
iPhoneの路線検索を頼りに地下鉄アナコスティア駅へ、そこから路線バスに乗るのだが、時間がギリギリだったこともあって、Google mapsで指示された路線ではなく、最初に来たバスの運転手さんについ、尋ねてしまう。乗れ!と言われて、ここだ!と降ろされた場所はアナコスティアのコミュニティセンターだった。 緊張で写真を一枚も撮っていなかったのが残念。バス停で途方に暮れていたが、すぐに本来乗るべきW2のバスが来て、ほっとして乗車。バスは坂道を登っていくが、スラムとはほど遠いきれいな住宅街や公園が続く。開館時間直前に、到着。スミソニアンのバスも到着していた。
スミソニアンのバスダイヤ(行かれる方は事前に最新の情報をご確認下さい)
ガードマンさんと館の受付の女性に、今日のイベントに参加する旨を伝え、館内を見学。みなさんとてもフレンドリー。潤沢な人員と少ない来館者。館内の展示はこんな様子。
10:30からツアーということで、裏の駐車場に停めてあった貸切バスに乗り込む。ICOMのツアーとかと同じような感じなのだけど、ICOMツアーは英語が母語でない人が多いから、お互い、何とかコミュニケーションを取ろうと努力するが、このアナコスティアのツアーは英語話者ばかりなので、会話のスピードに全くついていけない。でも雰囲気はなごやかなので、とりあえず一緒に連れて行ってもらうという感覚で。日本の博物館友の会のツアーに、一人知らない人が紛れ込んだような感じ?
申込をして遅刻した人がいたようで、30分ほど待つ。時間にいたっておおらか、というかテキトーと言うか。幼児を連れたお母さんも乗り込む。
バスが走り出すと、今までの地下鉄駅から博物館までの道のりとはがらっと違う街並みになった。公園ではフードバンクの配給が行われ、壊れた住宅やスラムを再開発したのかと思われる公営住宅風のアパートなどが続く。しかし、それほど長く続かず、緑の多い区域を進んで、ゲートのある一角の1軒目の作家さん(館の告知ページとは違う方のようで、お名前不明)の自宅兼スタジオに。ダンナさんが一行を迎えてくれ、靴を脱いで上がってねと言われ、スイカ、メロンなどをご馳走になり、その後、作品を前に、アーティストトーク。
ゲートの外に停まっているのが、私たちが乗って来た貸切バス。アナコスティア近郊。
このあと、バスは高速に乗ってボルチモアへ。眠くて、道中ウトウト。2軒目のアーティストJaneen Brown (clothing designer)さんのお宅は、ボルチモア郊外の一戸建て住宅地の中にあった。今度は作家のお母さんと思しき人物が迎えに出てくれる。このお宅は、靴のまま上がる。リビングにたくさんの椅子。テーブルの上には、ビスケットや果物、ジュースなど。アメリカの民家に上がらせてもらうのは今回が初めてだし、へえーと驚くことがいっぱい。トイレを貸して貰ったり、ホスト側は大変だなーと。
Custom Clothier on the Rise: Janeen Brown of Sobiu | Ms. Charm's Chic(ここをクリックして下さい)
彼女のブランドSobiuのHP
写真は、私たち一行に手作りのお土産を用意してくれた作家のJaneen Brownさん。
階下の仕事部屋も見せていただいた。このミシンで制作されている。
ここまで、知らない訪問者を入れてしまう度量にびっくり。後日、Hammer Museumで買った本によると、アメリカでアーティストになるには、先輩作家のスタジオ(アトリエ)訪問は欠かせないらしい。スミソニアンからは当然、謝礼が出ているのだろう。
その後、バスはボルチモアの町中へ向かう。ボルチモアのナショナル水族館は行きたい場所の一つだが、今回は日程上無理だった。さて、3ヵ所目の訪問場所、 Unexpected Art and Décorへ。
Unexpected Art Space, Baltimore MD
大きなビルのロフトで、オーナーのJeffrey Kentさんに案内していただく。絵に描いたようなアメリカのアーティストスタジオ、というべきか。日本だと、かつての前島アートセンターみたいな雰囲気かと。
こんな感じでまずは、飲み物やチーズ、サラミなどで歓待を受ける。新品のグラスを開けてくれたり。アルコールはぐっと我慢。
オーナーのJeffrey Kentさん
作品の保管ケースから次々、作品を出して説明してくれる。
ギャラリースペース
Jeffrey Kentさんの作品集を購入すると、サインをしてくれた。他の人たちは小切手を切っていた。アメリカ人は現金は持たず、クレカが使えない時は小切手を切るらしい。
↑ ここがスタジオのあるビル。バスがどこかへ行ってしまい、皆で途方に暮れるの巻。そもそも予定の時間はとっくにオーバーしている。その間、Jeffrey Kentさんから、職人さん時代の写真をiPadで見せていただく。
ライトレールが真ん前を走っている。
帰りもまたウトウトして、17:30頃、アナコスティア・コミュニティー・ミュージアム前で解散。他の人たちは、館の駐車場に停めたマイカーで次々帰って行き、大学生の女性と私だけがバス停に取り残された。と、そこにこの日のツアーの案内役の女性が車を停めて、私たちを地下鉄駅まで送ってくれた。もう少しで彼女の車の中に命綱のiPhone君を落としていくところだった。
館の隣の公園では、屋外パーティーのようなことが。
既視感溢れる光景だったりする。
さて、この日は、ワシントンD.C.滞在最後の日ということもあり、ホワイトハウスまで歩いて行ってみることに。反核の訴えと、多くの観光客と。
広島や長崎の写真が使われていて驚いた。
ホワイトハウス南のエリプス広場(文献読んでてエリプスって何だ?と思ったので、一度見てみたかった)
帰り道、どこかの豪華なテラスで、盛装した男女が集うパーティーと楽しげな音楽が聞こえてきた。この日に見聞したアメリカ社会の貧富の差のようなものは、まだほんの入り口に過ぎなかった。