第10回四国ミュージアム研究会愛媛大会 極私的参加記(その1)

2014年2月16日(日)・17日(月)の2日間、愛媛県今治市にて、第10回四国ミュージアム研究会が開催されました。なぜか、この研究会にお呼ばれで参加してきました。

 http://www.city.imabari.ehime.jp/bunka/suigun/topics/20140216.pdf

四国ミュージアム研究会は、四国4県の学芸員さん有志が持ち回りで開催している研究会で、今年は愛媛県の皆さんが担当されました。

今回は、この研究会で喋れ、ということで大変ご丁寧なオファーをいただきました。手書きの、それも達筆なお手紙まで頂戴し、時々Twitterでゲスト講師打診とかしてしまう私としては、非常に恐縮&緊張しました。本番の1週間前に、曲りなりにもレジュメが出来ていたなど、我ながら信じられません。そこで安心してしまって、結局、予行演習=時間計算出来ないまま、本番に臨んでしまいました。

さて、研究会で見聞きしたこと、考えたことを中心に、レポートしてみたいと思います。といっても、非常に主観的な(勝手に脱線しまくりの)ものですので、研究会の内容を正確に伝えるものでは決してありません。なお、二次会等で後から個人的に教えてもらったお話も(差しさわりのない範囲で)加えて書いています。

今回の愛媛大会のテーマは、「小規模館を育てる眼差し」、参加者は67名だったそうです。

まず、今治城・今治市河野美術館の藤本誉博さんの趣旨説明「今治市におけるミュージアムの現状と諸問題から」。小規模館問題の改善に向けて;基盤となる運営状況の把握とセットで、とのことで、「これがないと机上の空論になる」との主張が、今回の企画の肝なのだろうと思いました。

次に、第10回事務局・今治市村上水軍博物館の田中謙さん「四国地区 博物館基礎データアンケート調査票 集計・分析例」。82館からの回答を分析。市町村立館では指定管理者制度の導入が少ないのが、データとして明らかに。学芸員の正規専従率も低い。このアンケート結果は、田中さんが公表される予定ですので、ネタバレは避けます。

 

このあと、【事例報告:四国各県の小規模館から】

愛媛県久万高原町 面河山岳博物館の矢野真志さん http://web.agr.ehime-u.ac.jp/~entomology/yano.html (面白い方ですね~)

館HP:http://www.kumakogen.jp/modules/omogo_sangaku/

確か、館長さんは両生類、矢野さんはカメムシがご専門とか。他館のよい試みを取り入れるのは、パクリではなく、「オマージュです!」。この一言が、今回の研究会で一番受けたフレーズでした。

カメムシ展の工夫は、カメムシそのものの臭いをかがすのではなく、香料を使う(本物では臭すぎるのだそうです。これはいささかショック)、展示での観察用には、密閉容器の蓋を丸くくりぬいて、100均の拡大レンズをはめるとか。ちなみに、矢野さんは、西日本自然史系博物館ネットワークの「自然史系学芸員100円グッズプロジェクト」世話人のお一人でもありました。

http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/ogawa/100yen/

DB整備には、「住民生活に光をそそぐ交付金」を利用してデータ入力をし、科博のS-Netサイトで見ることが出来るようにした。26年度からは、事業協力館に指定され、出張旅費等が貰えるようになったとのお話でした。S-Net → http://science-net.kahaku.go.jp/

 

高知県 香美市吉井勇記念館の柳瀬美紀さん

館HP:http://www.city.kami.kochi.jp/soshiki/64/

ともかく、とてつもなく不便な場所にあるらしい。吉井勇が奥さんに裏切られれて、失意のどん底の時代に隠棲したゆかりの地、猪野々に、地元の人たちの熱い思いで誘致された記念館。100世帯で人口200人らしいが、高齢化が進んでいて、住民票はあっても施設に入っていたりで、実際に動ける人たちは100人ちょっととか。猪野々で若い人と言えば60代、役をしている人で70代、お年寄りは80代以上とか(10歳ずつ私が勘違いしているかもしれません・・・)。

そんな中、地元の飲み会だった七夕の星祭を、記念館も一緒になってイベント化、田舎料理のバイキングと物産市(オクラ詰め放題とか)を行い、無料送迎バスも用意したとか。猪野々活性化委員会の主催にしたのがイイネ、の声が上がっていました。

報告者の柳瀬さんと同僚さんの語り口がよくて、大ファンになりました。懇親会では、楽しい館長さんネタ、翌日は、もっぱら柑橘類と公共バスネタで盛り上がりました。お話を伺えば伺うほど、ぜひこれは行かなくては!という気にさせられました。バスは行きは12:00位着が1本、帰りは5時台だったかな、が1本しかない、お昼ごはん食べるところも、喫茶も自販機もない地域だそうです。道路もマイクロバスしか入れないとか。行く時は、弁当、飲み物を忘れないように。

なんか、ここは絶対に行かなくては!と思いました。(真面目に言うと、吉井勇が、というより、博物館って人の魅力が大きいのだなーと。この2人を採用した香美市、偉いと思いました)

それにしても、市営バスは、どの路線なんだろう?

香美市営バス路線:http://www.city.kami.kochi.jp/soshiki/11/shiei-bus.html

 

香川県 三豊市文書館 宮田克成さん

館HP:https://www.city.mitoyo.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=7206

合併後の旧町役場の文書が、秘密の小部屋に収蔵されている、文書の入った段ボール箱写真・・・あるある感が満載でした。宮田さんのお仕事は、毎日午後から旧庁舎を回り、評価選別することだとか。

文書館の存在が、情報公開のためと言われている間は、施設自体は安泰だが、教育普及には関心がなくともよいとされている中で、どう普及するかが悩み、とのこと。

展示だけ見て帰る人が多いので、閲覧請求を増やすために、文書館体験講座を開催されています。(でも、公文書館を使うのは難しいよなーと思うのでした)。別の機会に、評価選別論を伺いたいです。

宮田克成「開館1周年をむかえる三豊市文書館」http://www.archives.go.jp/about/publication/archives/pdf/acv_47_p40.pdf

 

徳島県佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター 田代優秋さん

県HP: http://www.pref.tokushima.jp/docs/2000082800015/

センターHP:http://www4.tcn.ne.jp/~fureainosato/index.html

田代さんのPPTがとってもきれい。プレゼン、お上手。この方の後に私の下手なパワポ投影&喋るのかと思うと、穴に入りたい気持ちになりました。

県が設置したセンターにNPOが指定管理で入り、センター長が個性とイニシアチブを発揮。最後の超えてはいけない一線は専門家が判断、というのは納得のいくお話でした。スタッフのお一人が、新種のカタツムリを共同発表(アナンムシオイガイ)、これをきっかけに、市内の菓子店にカタツムリスイーツを開発・販売してもらったというお話がすごい。(ちなみに、私はカタツムリが苦手です。あの形のモノを食べるなんて・・・)

"徳島県阿南市で新種「アナンムシオイガイ」を発見" http://www.city.anan.tokushima.jp/docs/2013021300026/

”阿南の新種カタツムリモチーフ 5店がスイーツ開発、28日から販売” (徳島新聞http://www.topics.or.jp/localNews/news/2013/10/2013_13824038959053.html

 

この後が私の講演「小規模館運営の現状と課題―社会構造の変化と博物館をめぐる法制度改革の動向を踏まえてー」でした。サブタイトルは自分でつけたのですが、あれこれ四国のことを勉強しているうちに、当初のぼんやりした思惑とは随分違う方向へ突っ走ってしまいました。

事前に事務局の皆さんにレジュメを読んでいただいた結果は、「資料をどうするか、の部分が分からないねー」とのことでしたが、それを伺ったのは当日でしたので。

レジュメとパワポの組み立ては、次のようなものでした。

  1.社会構造の変化 2.自治体の財政状況 3.各県の施策 

  4.公共施設等の総合的な管理による老朽化対策等の推進

  5.合併算定替の特例期間終了問題 6.恐怖の「施設仕分け(統廃合)」

  7.博物館が存続していくために・・・

  8.寄附を集める/複数の指定を受けられる大規模な管理団体の模索

それで、どうやって小規模館が生き残るのかは、凡庸な提案しか思いつかず、本当に申し訳ないのですが。しかも、時間をオーバーして喋ってしまい、パネルディスカッションの時間を相当減らしてしまい、深く反省しております。

このあと、今治市河野美術館の展示を案内していただきました。

そして、懇親会&2次会

ここからが本番だそうです!2次会の焼鳥が今治名物だそうで、2次会が本命と聞いていましたが、1次会のご馳走も豪華(鯛メシもありました)。2次会では、スパイスの効いた鶏手羽を堪能しつつ、ポンジュース吉井勇記念館のすてきな館長先生についてのお話等々で盛り上がりました。(続く)

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四国ミュージアム研究会の沿革;http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/hasegawa/museum/net.htm

 

博物館が好きっ!―学芸員が伝えたいこと