第10回四国ミュージアム研究会愛媛大会 極私的参加記(その2)

 2日目(2月17日)は、現地見学会(今治市大三島の新ミュージアム探訪)でした。朝、8時半集合というのは、9時までにしまなみ海道に乗らないと、早朝割引が受けられないためだそうで、遅刻せぬようにとハッパをかけられました。前夜、3次会まで行ったツワモノもおられたようですが、誰一人遅れることなく集合。9時半集合と勝手に脳内変換していた私・・・も何とか間に合いました。大きなバスと小さなバスに分乗して出発!

途中、今治タオルと柑橘ネタで盛り上がりました。何でも、「媛まどんな」というのがおいしいそうです。http://www.kajuen.co.jp/introduction/item34.htm (通販で買おう!)実がゼリーのようだとか。

 

・岩田健母と子のミュージアム

館HP:http://museum.city.imabari.ehime.jp/iwata/about/

行き方案内:http://www.go-shimanami.jp/shisetsu/omishima/027.html

館内外にゴミ一つなく、特にトイレがきれい! 空間としてはオシャレですが、岩田健さんという作家が、日本美術史 or 世界の美術史の中でどう位置付けられる作家さんなのかの説明があればいいな、と思いました。

岩田健母と子のミュージアム、ところミュージアム大三島今治市大三島美術館の3館を、一人の学芸員さんで回しておられるとのこと。日頃の管理は、受付のアルバイトさんが担っておられるそうです。

限られた空間(丸く囲い込まれている)の中で、プラスアルファの企画となると・・・。当日は思い付かなかったのですが、大阪に戻ってから、この白い壁にプロジェクターで映像作品を投影してはどうかと思いました。館内で有料でもいいし、外側の壁なら、無料イベントもあり得るでしょう。

例えば、私はマイヨールみたいな具象彫刻は苦手なのですが、マイヨール美術館でバスキアの映像作品を見て、バスキアファンになりました。だから、コレクションとは傾向が違っても、美術の普及になるような冒険的な映像を見せてもいいと思うのです。

【2/23 追記】よく考えると、映像投影は暗くないと出来ないです。この岩田健母と子のミュージアムは、ほぼ壁だけのような構造で天井がないため、密閉して暗くすることが出来ません。なので、プロジェクター投影は、夜間しか出来ないことになります。満点の星空の下で映写会とかトークセッションとかも魅力的だと思いますが、職員さんの残業手当が出せないだろうなーと、現実的なツッコミを自分で入れてしまうのが悲しいところです。

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隣接地に、廃校を利用した昔懐かしい風情の宿泊施設がありました。ここ使って、アーティスト・イン・レジデンスするとか。

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・ところミュージアム大三島

館HP:http://museum.city.imabari.ehime.jp/tokoro/collection/

寄贈者であるところさんのご意志を最大限尊重して、開放的な空間に現代美術の立体作品を展示、展示室は階段状に海に面した斜面に建てられています。真下に海、横にみかん畑の素晴らしいロケーション。廃材で作った林範親さんの「K・I・O・S・K 3・4番ホーム」や、どなたの作品かメモしそびれましたが薄紙で作った作品など、この発想はなかった、ということで好感が持てました。

海の見えるテラスでのコーヒーサービスがあるのもいいですね。天井が高いので、メンテナンスが大変、大自然の中で朽ち果てていっても構わない!ということでしょうか。

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伊東豊雄建築ミュージアム

館HP:http://www.tima-imabari.jp/

これまた、海の見える絶景の地に建つ、おしゃれなミュージアムです。建物は3棟に分かれていて、倉庫として建てられた一見ガレージ風の建物と、伊東豊雄さんのかつての自邸のコンセプトを再現した棟と、展示棟、があります。ガラス張り、スケスケ空間から見る瀬戸内海が絶景過ぎて、正直、展示や館内部を見るより、建築を通して見る多島海の方に目を奪われてしまいます。

リビングルームの部分は開放空間になっていて、テーブルと椅子があるので、ここはカフェレストランにすると大ヒットするのではないでしょうか? Free Wi-Fiとか飛んでいたら、サイクリストがブログ書いたり、翌日の旅程組んだり。あ、でも、厨房がないですね。ところミュージアムのような紙コップにインスタントコーヒーでもOKかと。ここで腰を下ろして、ノートPCとガイドブック広げたいですね。

研究員さんがお一人常駐されているそうですが、あいにくこの日はご都合が悪く、市職員の方が開設のいきさつやコンセプトを説明して下さいました。

伊東邸再現部分は、DKと2階の子ども部屋スペースもおしゃれな作りで、DK部分が研究員さんの作業スペースになっているようです。壁面の本棚をちゃんと見ていなかったのですが(←これもみんな海のせい!)、伊東さん関連の書籍とか写真集が閲覧できるといいと思いました。

展示棟の方は、常設スペースはこれまでの伊東作品の白いミニチュア模型が、青い壁や天井に、瀬戸内海の海に浮かぶイメージで散りばめられています。そして、伊東さんが建築を考える上でこれが大事!と思われたのであろう、色々なフレーズが文字で書かれているのですが、どれがどれだか・・・というか、その先のガラス張り空間の先に見える青い海が気になって・・・・。(みんな海が悪い!)

いや、ここは一人で来ないと真面目にじっくり見ない(読まない)だろう、と思いました。

そしてガラス張りの企画展示空間では、伊東建築塾の作品が。制作物のデザインセンスがおしゃれなので、建築系の人はすごいなーーと。ただ、内容的には、まちづくり・村おこし系WSに見えて。

伊東豊雄さんと言うと、日本でガラス張り建築を流行させた最初の人?というイメージなのですが、せんだいメディアテークを見た時に、ポンピドゥーセンターのパクリ オマージュではないかと思いました。でも、せんだいメディアテークの模型はポンピドゥーセンターにコレクションされていると知り、そのあたりの影響関係とか知りたいと前から思っていますが、そういう情報(つまり、建築史の中での伊東豊雄の位置づけとか)が展示されているといいなあ、と。自分で調べろ!と言われそうですが。

あと、自由に持って帰ってよいみかんや八朔が、コンテナにいっぱい。帰りのJRの中でおいしくいただきました。

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今治市大三島美術館

館HP:http://museum.city.imabari.ehime.jp/omishima/

大山祇神社に隣接して建てられた美術館で、日本の近現代絵画を扱っています。応接室も飾られた作品ごと公開、ここの焼き物の絵が、私は一番気に入りました。陶磁器を並べて上から見たところを平面で表現しています。この発想はなかった!というか類似の作品を見た記憶がないので、オリジナリティー高い!と勝手に判定。

この場合、元の陶磁器の著作権意匠権?)ってどうなるのかなーーと、明後日の方向に想像が飛んで行きました。そもそも焼き物系の著作権って。ということで調べてみたら、文化庁のこんな回答が。読んでも結局よく分かりませんが。

「Q 茶碗、壺、お皿などの焼き物は著作物ですか。」http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000067

当惑したのは、奥の記念室です。う~ん。どうも、なぜこの作家さんの記念室なのかの理由は、あまり明確ではないような・・・・。

この美術館には、後から増築された交流館というスペースがあり、ここは集会スペースとして利用可能です。ここに地元の高校生たちが昔の町並みを調査した結果が展示されていました。近寄ってみると、すごくうまくて(オシャレで)、先ほどの伊東建築塾の塾生さんたちが関わって制作していることが分かりました。このデザイン、すごいよねー。写真の撮り方とか。塾生さんたちが引き上げたあとに、この高校生たちがどう引き継いで行くかな・・・。いい経験だとは思いますが。

・今回の全体を通して:四国では地元作家さんの発言力とか、公募展の権威とかがいまだに強いんだなーと思いました。作品選ぶ基準が、〇〇展入選作家というのは、私としては違うのではないかと。美術館のなかのひとは大変だな、と。何をするにも予算がないので、新しい作品買うとか、外から借りて来て特別展組むとかが出来ない状況の中で、手持ちのコレクションをどう、教育普及活動に生かしていくかが課題なのだろうと思いました。

 

おいしいお昼をいただいた後で、大山祇神社に行きました。

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宝物館と海事博物館に入ったのですが、このカオスな海事博物館が、なかなかツボでした。

絵馬ならぬ、奉納軍艦写真の数々。大正時代のからありました。軍艦って、こういう形してたんだーー。マニアな雑誌とか写真集はいくらでも販売されていそうですが、そういうの買わないし。

あと、村上水軍の船のミニチュアがあって、潜水船とか怪しいことが書いてあったので、しげしげと構造を眺めていました。蓋がついてるけど、潜水したらどう考えても浸水するだろーとか。

博物館も、そこでの展示も、誰がどう見るかも、展示作った人の意図とは無関係に多様な解釈というかツッコミを生むので、面白いんですよね。そういう意味では、日本美術のコレクションも、国際(西洋?)標準から大きく逸脱している部分を楽しめばいいじゃん、なのかもしれません。

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大三島海事博物館。巨大なプロペラは今治造船グループの奉納です。

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