10月に読んだ本

今月は授業が本格的に始まったこともあって、本はあまり読めませんでした。後半は特に、iPhone5sという高級おもちゃを手に入れ、本そっちのけで、いじっていました(いや、タネまきと植え替えも、忙しかった)。逃避の対象はいくらでも見つかります。

読書のライバル大根さんが、Twitter止めてしまったので、本を読む張り合いがなくなってしまったのも、大きいかも・・・です。

 

2013年 10月の読書記録まとめ (読み終わった本)
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田中角栄と国土建設―「列島改造論」を越えて」
米田 雅子/ 中央公論新社/ 1575円/ (2003/11/01)
■ 読了(2013/10/17) / 評価:4.5 /
同時代史を国土開発の観点から面白く読める本。田中角栄の足跡もさることながら、財政投融資、日本列島改造論の真の著書(である官僚たち)、土光臨調、プラザ合意等が平易に説明されている。残念なのは、巻末に主な参考文献のリストはあるものの、本文に細かい注が付く訳ではないので、真偽のほどが確認出来ない点である(例えば、エージェンシィのことなど)。 
著書は、規制撤廃、省庁間の縦割り解消を主張しており、「補助金を受けて作られた施設は、20年間勝手に変更・処分できない」という規制の撤廃を求めている。施設の用途替え(コンバージョン)が必要との観点からだ。以下、過激な記述を転載しよう。
「87年から99年にかけて、日本全国の文化会館の数は、782から1751へ、図書館の数は1801から2593へ、美術館は379から987へと増えました。博物館(類似施設を含む)にいたっては、2311から5109まで増えています。ちなみに、「文化会館」の名のつく施設は、文部省(現・文部科学省)が建設時に補助金をだした施設です。この他にも、農水省の場合は「ふるさと会館」、厚生省(現・厚生労働省)ですと「福祉会館」の名前がつきます。どの省庁の助成で建設されたのかがすぐわかる仕組みになっています。省庁ごとの縦割りで、地方に施設が建てられていきました。」
http://www.readingplus.jp/entry/4120034739/1694001

「朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機」
根本 祐二/ 日本経済新聞出版社/ 2100円/ (2011/05/25)
■ 読了(2013/10/09) / 評価:4.0 /
PPP推進派による恐ろしい本である。公共施設や橋、道路、上下水道等の社会資本が老朽化し、今後一斉に更新時期を迎えるが、そのための財源がないという問題は既知の事実だが、この本が恐ろしいのは、施設仕分け(統廃合)の対象として、公民館、図書館を挙げて、その支持者を徹底的に叩いている点だ。著者が指導した習志野市ワークショップの様子などが紹介されているが、参加市民に電卓を持たせ、公民館利用1件あたりの費用、図書館貸出者1人あたりの費用を計算させている。前者が1万円、後者が1,000円とか。さらに、廃校舎用地を空地として保全する費用は、校区1世帯あたり、100~150万円とか。ちなみに、ゆとりある空間を享受する権利は、「ゆとり権」と言うらしい。
という具合に、「特定の利益代表者」は、ボコボコに叩かれているのだが、こういう手法を持ち込まれた時に、反論出来るかが問題だ。「施設は統廃合して機能は残す」という考え方に、あながち反対は出来ないだろう。収蔵庫のあるミュージアムはどうするんだ、とかは考えたが、この本には、ミュージアムのことはほぼ出て来ない。社会教育学会で、この著者を呼んで討論したらいいとか思うけど、そんなことを考えるのは、きっと私だけだろう。被害者意識を振り払えば、いろいろ勉強になる本である(スケルトン・インフィルの活用など)。ただし、民間に任せることが無条件にバラ色とは思えないので、そこの部分のツッコミが欠けている本である。
http://www.readingplus.jp/entry/4532354595/1694001

「東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ (新潮文庫)」
朽木 ゆり子/ 新潮社/ 788円/ (2013/08/28)
■ 読了(2013/10/05) / 評価:5.0 /
研究者以上の仕事をする職業ライターの実力を見せつけられる、朽木ゆり子さんの労作。一般書の体裁を取ってはいるが、アメリカ国立公文書館、数多くの美術館やロックフェラーのアーカイヴ・センター、山中商会等の所蔵資料をふんだんに用い、詳細な注と参考文献リストを伴っている。一次資料に浸りながら、こんな仕事がしたい、と思わされる。初めは読み進めるのに苦労したが、途中であとがきを読んで大いに刺激を受け、後は一気に読んでしまった。博覧会や展観、戦前の中国からの美術品の買い付け、アメリカで東洋美術のコレクションを持つ美術館情報等、参考資料としても利用価値は大きい。
http://www.readingplus.jp/entry/4101278911/1694001

「働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論」
長谷川 英祐/ 講談社/ 1365円/ (2013/09/19)
■ 読了(2013/10/03) / 評価:3.0 /
自然史系の本だと思って買ったら、お疲れサラリーマン&大学教員がひと時の癒し(憂さ晴らし?)を求めて読むような感じの本だった。アリなどの話も出てくるのだけど、データも出典も上がっていないので、真偽を確かめようがない。生き物の話と、人間界の話が混在しているので中途半端な印象を受ける。
発見は、井上陽水の「傘がない」の歌詞は、「社会のことより、今の自分のちっぽけなことが問題」という内容だ、という話。あと、「日本の経済団体は日本の雇用等を守るため、日本の法人税を引き下げるよう要望しています。」(でないと、法人税や人件費の安い他の国に事業移転してしまう)、「国は税金で収入を得ており、法人税を上げられないとなれば、国民個人に課す税金を上げざるを得なくなります」の部分。ああ、今、直面しているのは、これなのね、と。
http://www.readingplus.jp/entry/4062185865/1694001

「日本の財政 (中公新書)」
田中 秀明/ 中央公論新社/ 903円/ (2013/08/25)
■ 読了(2013/10/01) / 評価:5.0 /
日本の財政の現状、OECD10ヵ国の財政再建の取り組み、公務員制度と政治の在り方、今後の望ましい制度設計について、新書ながらバランスよく充実した内容が読める本。特にオーストラリア、フランス、ドイツ、スウェーデン等の財政再建の状況が読めたのが嬉しい。小泉内閣の予算の検証や、NPMは単に民間の経営手法を政府部門に導入することではなく、政治的なリーダーシップの強化や集権化が必要だという話、日本の霞ヶ関公務員は政治化し専門性が劣化していること(調整業務や政治家対策に追われ、データに基づく問題の正確な分析や選択肢の検討を行う暇がない)、今後の日本の財政がどうなるかの考え方(プライマリー・バランスが均衡している場合、債務残高の対GDP比は、成長率と金利の差で決まる)など、参考・勉強になることが非常に多い。
http://www.readingplus.jp/entry/4121022289/1694001

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